在庫を持つことの意義

在庫は悪。一昔前にメーカーではよくこのようなキャッチコピーを見かけました。いえ、メーカーだけではなく卸売業、小売業など様々な業界で見かけます。

しかし、本当に在庫は悪なのでしょうか。

私の考える答えはNOです。在庫は、経営に悪影響を与えない範囲内できちんとコントロールされておれば在庫を抱えることは問題ない、いや、むしろ企業活動を円滑に進める役割を持つと考えています。

在庫を持つことの目的は大きくは2つあります。

一つ目は「経済性の追求」です。

経済性の追求とは、つまり効率をよくするということになります。
具体的には下記の3つの効果が考えられます。

まず、在庫を持つことにより、見込みでの大量生産が可能となります。そのため、スケールメリットの享受による原価の低減の効果がまず見込めます。

次に見込み生産をすることにより、生産の平準化が可能となります。これにより工場の操業度が維持できます。

最後は仕掛品、半製品の在庫を持つことで工程能力の吸収の効果が見込めます。
これはどういうことかと言いますと、本来はラインバランスがきちんとされた工程を構築するのが理想ですが、現実問題としては不可能に近いです。そこで、その工程の能力の差を埋める形で工程間在庫を設定することで、理想に近いラインバランシングが可能となります。

これら3つの「経済性」はすべて工場内の話となります。
つまり、効率よく生産・製造業務を行うためには在庫が必要だということになります。

二つ目の目的は「販売の円滑化」です。
在庫を持つことにより営業活動がやりやすくなります。
具体的には下記の3つの効果が考えられます。

まずは、納品リードタイムの短縮。在庫を持つことで、注文を受けてすぐに顧客に納品することができます。これは昨今ますます重要度を増していると考えています。

次に展示・品揃えの充実です。これはもう言葉の通りで在庫がないと展示もできませんし、商品サンプルを見込み顧客にお渡しすることもできません。

最後に需要変動の吸収です。顧客からの注文の変動に対応するためにあらかじめ在庫を持つことで、欠品を少なくすることを企図します。

このように、製造・生産サイドから見ても営業サイドから見ても在庫は必要なのです。
しかしながら、営業側は在庫を持ってほしい、工場側は在庫を持ちたくない、その逆のパターンもありますが、会社全体として在庫を持ちたい派と持ちたくない派が争っている構図をよく見かけます。

しかし、経営的な視点でいけば、適切な在庫を持つのが正解に近いといえるでしょう。

その適切な量というのが、生産サイドと営業サイドで変わってきますので、落としどころを計算してコミットさせるのがマネジメントの責務となります。